一つの戦いは終幕を迎え。

後に残ったのは誰もいなくなり静かになった退魔の一族の森のみ。

その一族の最後の生き残りは己の目的のために連れ去られ。

ある屋敷の部屋で目を覚ます。





真 月 伝







僕は布団の中で目を覚ました。

見知らぬ天井、見知らぬ部屋、そして布団の中。

何もかも――――分からない。

ふと誰かの気配を感じ体を起こす。

そこにいたのは、一人の女の人。するとその人は、僕が目覚めたのを確認して部屋を出て行った。

部屋には僕一人となり、何故僕はココにいるかを考える。



一体ココは何所だ?

確か僕は七夜の森で、赤い鬼人と呼ばれる軋間紅摩と戦って・・・。

そして、木に激突して意識が無くなったんだ。

それで――――。

僕がアレコレと考えているうちに、一人の男が部屋に入ってきた。





「目が覚めたかね?」

『私と会うのは初めてだ』

ぐっ・・・何て強い暗示だ。だが、僕がお前を忘れるはずがないだろっ!遠野・・・・まきひさっ!

――――そう、部屋に入ってきたのは遠野槇久。

七夜が滅びる事になった元凶。全ての首謀者。

槇久は部屋に入るなり、僕に暗示を掛けてきたが、頭の中はある言葉でいっぱいだった。

今すぐ殺してやる。

僕は頭の中騒ぎ立てる言葉のとおりに実行しようとした。

だが、目の前の槙久以外にも他に沢山の氣を感じる。



チィ、しっかり監視が付いていやがる。今殺したら僕も死ぬか・・・。

――――こんな所で死ぬわけにはいかない。

という事は、かかったふりをするのが一番か。





「おじさん誰?」

「私は遠野槙久、お前のお父さんだ」

「槙久・・・父さん」

「そうだ、お前には他に兄の四季と妹の秋葉がいる」

「四季にいさんと・・・・・秋葉」

「うむ、では最後にもう一回私の名前と、兄と妹。それと自分の名前を言ってみろ」

「槙久父さんに四季と秋葉。そして・・・・・遠野志貴」

そこまでいうと、槙久は「成功か」と呟き部屋を出て行った。それと同時に、他の沢山の氣も消える。

僕は悔しかった。

ヒドク酷く、悔しかった。

七夜の名前を捨てなければならなかったこと。

目の前にその元凶がいるのに討てなかったこと。

そして――――。





「七つ夜と月夜がないっ!」

形見が何一つ無かった事に。

大切な・・・形見。

僕はその晩、思いっきり泣いた。

泣いて泣いて泣き腫らして・・・いつの間にか寝ていた。





次の日、名前も知らない子が、僕を外に出そうとやってきた。

だけど、僕はそれを無視する。今外に出て魔に会ったら、どうなるか分かったもんじゃない。

それでもその子は、次の日も次の日も、僕を外に出そうとやって来る。

僕は外に出る気など全く無かったから、それを全て無視していた。



それがさらに続く。幾日も何日も。

名前も知らない子は、今日も僕を外に出そうとやって来た。

僕はいつも通り無視をする。そうすれば、いつもの様に諦めて戻っていくだろう。

僕はそう考えていた。

だけどその子はいつもと違って、今日はしつこい。

その態度に僕は少し悪い気がして、落ち着いてきた事もあって、今日は外に出てみる事にした。

外に出るために扉を開ける。





「ねえ〜外に出ようよ。いつまでも中に入ると、モヤシっ子になるよ」

「何?いつも僕の事呼んで」

そこにいたのは、髪を肩口で切りそろえ、白のワンピースを着ている女の子。

目の色がとても綺麗な女の子だった。



「やっと、顔見せたね〜。私の名前は翡翠だよ、君の名前は?」

「志貴」

「そっか〜、四季君と同じ名前なんだね。じゃあ君は志貴ちゃんって呼んでいい?」

「いいよそれで。じゃあ僕も翡翠ちゃんでいい?」

「うんいいよ。じゃあ行こっか」

「何所へ行くの?」

「四季君と秋葉ちゃんの所だよ」

僕と翡翠ちゃんは駆け出した。

四季と秋葉が待っている場所へ。

その際僕は、周りに対して注意をしながら走っていた。





「翡翠おせ〜ぞ」

「翡翠ちゃん・・・遅い」

向かった先には一人の、少年と少女がいた。

髪が白くボサボサで着流し姿の少年。

髪が黒くてとても長く、何処かフランス人形の様な感じのする少女。

これが僕たちの出会い。





「遅れちゃって、ごめんね〜」

「あれ?そいつは?」

「初めまして、志貴です」

「そうか、お前が親父の言っていたやつか。こっちは妹の秋葉よろしくな」

どちらからも魔の気配は感じ取れない。

これだったら殺す必要は無いな・・・。

やはり、殺すのは槙久一人か。





「よろしく、四季兄さん」

「ただの四季でいいぜ、俺もそうするから」

「わかったよ、四季」

そして、僕達は握手をする。

僕はこいつと、いい友達になれそうな予感がした。





「ん?どうした?秋葉?」

秋葉と呼ばれた少女が体をビクリと震わせる。

その仕草が子供ながら可愛いと思った。





「・・・この人も秋葉のお兄ちゃんなの?」

「そうだぞ、それがどうかしたか?」

「・・・じゃあ、こっちをお兄ちゃん。・・・・お兄ちゃんを四季お兄ちゃんって呼ぶ」

「俺もお兄ちゃんでいいじゃないか」

「・・・紛らわしい」

「なにぃ〜」

僕と翡翠ちゃんは大笑いした。

こんなに笑ったのは一体いつ以来だろうか。

一頻り笑った後、皆と一緒に遊ぶ事になった。

どうやら何時もこうして遊んでいるらしい。

皆と一緒に遊んだ後、日が暮れたら帰る。

そんな楽しい日々が毎日続いた。





ある日、いつもどおり遊び終わって帰る途中、僕はふと視線を感じ二階の窓を見る。

そこには翡翠ちゃんとそっくりな女の子が、窓からこちらを見ていた。

その瞳は儚気で脆く、寂しそう。

僕がその子に手を振ると、その子はビックリしたのか隠れてしまった。





「翡翠ちゃん。双子のお姉ちゃんか妹いる?」

「お姉ちゃんがいるよ〜」

「あ、やっぱりいるんだ。何て名前なの?」

「琥珀お姉ちゃん」

「琥珀ちゃんっていうのか。あの部屋で何してるの?」

そして、僕は先ほどの窓を指差す。

もう琥珀ちゃんはそこから覗いていなかった。





「槙久様のお手伝いしてるよ」

――――ドクン

槙久の手伝いだって!?

――――ドクン、ドクン

何故か僕は酷くいやな予感がして、今夜でも調べようと思った。

あの槇久が――――ただの手伝いをさせる訳が無い。





「翡翠ちゃんはしなくてもいいの?」

「お姉ちゃんがするからいいみたい」

「そっか、それじゃあねバイバイ」

「うん、バイバイ」

そして、僕達は別れた。

離れへ帰る途中、翡翠ちゃんの言った言葉が耳に焼き付いて離れない。

『お姉ちゃんがするから』

多分それは・・・。

琥珀ちゃんが翡翠ちゃんを――――。



―――――――その夜。

僕は部屋を抜け出し、外に出た。

足音も立てず、気配を消し。





「たしか、この窓が琥珀ちゃんのいた窓だな」

僕は窓の近くの木を、音も立ずに登る。

こんなのは造作も無い事。

そして、その部屋の中を木の上から見て――――。

頭の中が真っ白になった。

何が起きているのか、理解できなかった。

これは、現実な訳がない・・・。

今僕が見ているものを夢だと思いたかった。

それはそうだろう。

僕の目に映りこんできたのは――――。





感情のない瞳で、槙久に陵辱されている琥珀ちゃんだった。



僕の中の何かがプチン、と弾けた。

殺す 殺してやる コロシテヤル 今すぐ殺してやる

やはり、あの時殺しておけばよかった。

一体何をやっているんだ僕はっ!

全て――――何もかも僕のせいだ。

琥珀ちゃんがこんな事されているのも。





「ゴメン琥珀ちゃん。僕が、あの時殺しておけば・・・・」

琥珀ちゃんを助ける。

その為に木から槇久の部屋に飛び移ろうとした所で、僕はある事に気づいた。

今、僕には決定的に殺せる武器が無い。

七つ夜も月夜も無い。

それに向こうには、アイツの他に魔がいっぱいいる。

複数の強い魔の氣を持つやつらを一度に相手をしたら、今の僕では死んでしまう。

そこまで考えて僕は絶望するしかなかった。



・・・・・・くそっ、どうしようもないじゃないか!

ごめん、琥珀ちゃん・・・今は助ける事が出来そうにないよ。

でも絶対強くなるから。その時はここにいるやつらを皆殺しにして、絶対に助けるよ。

僕は唇を噛み締めながら、自分の部屋へ戻った。

そして僕は、強くなることを誓い、眠りにつく。







―――――――ただ僕は知らなかった。

近いうちに起こる事件で、この家から離れる事に。









初めて槙久様に呼ばれたのはいつの事だったか覚えていません。

初めて呼ばれた日は、私もお手伝いができると期待していました。

そして、夜に槙久様のお部屋へ行き、中へ入りました。

私は、どんなお手伝いだろう?

と、少し緊張していました。

そんな私を見て槙久様が、「すぐに終わるからそんなに緊張するな」と言ってくれました。

だから、その言葉で私は少し緊張がとけました。

しかし次の瞬間、私が思っていた事より、信じられない事が起こったのです。

槙久様は内側から鍵をお掛けになると、いきなり私をベッドに押し倒してきたのです。

もちろん訳が分からず、私は抵抗しました。

だけど、私が抵抗すればするほど槙久様は、私を痛めつけてきます。

私は訳がわからないまま、泣き叫びました。

そして、どれくらいの時間がたったかわかりません。

私には永遠とも思われる、地獄の様な時。

終わった後、槙久様が「次は翡翠だな」と言ったのです。

私はハッとしました。

翡翠ちゃんにこんな事を、絶対にさせるわけにはいかない。

だから私は、お願いしました。

その言葉を聞いて槙久様は「わかった」と言い部屋を出て行きます。

その時から、来る日も来る日も私は乱暴され続けました。

死にたいとも思いましたが、そうすれば今度は翡翠ちゃんに私の役目がなってしまう。

私は翡翠ちゃんを守るために辛くても頑張りました。

私は翡翠ちゃんのお姉ちゃんだから。

それでも、私はこのままでは壊れてしまうと気づき、人形となる事に決めました。

人形ならば壊れない。

そして私は、大きくなったら復讐しようと思いました。

槇久様に、ひいては遠野家に・・・。



その日から私は、復讐の人形となって生きる事を決意したのです。

全ては、私の可愛い翡翠ちゃんを守るために。

毎日続く中、私は一つ気になって、何故こんな事をするのか槙久様に尋ねました。

槙久様は「私の計画のためにはお前の”感応”の力が必要だからだ」と答えます。

そして、私に感応とは何かを教えてくれました。





ある日、屋敷に一人の男の子が来たのです。

その子は、私と同じようで部屋から出ない、と翡翠ちゃんが教えてくれました。

多分その子は――――。

何日か経った後、その子が笑顔で外に出てくるようになりました。

私はそれを見て――――。

でも私は、皆が遊んでいるのをただ上から眺めるだけ。

それから更に何日か続いた後。その子は私の方を見て、私に手を振ってくれたのです。

私はそれを見た瞬間、心が痛みました。

人形であるはずの私が痛むなんて。

――――アノコハキケン ニンギョウデアルワタシヲコワス

何故か私は、涙が出て来たので隠れました。

だけどその涙は、不思議と今まで流してきた涙と違い、悲しくありません。

またあの子を見たいと思ったので、窓から覗くと既にいませんでした。



次の日から、その子は晦日私を誘ってくれたのです。

私の名前は翡翠ちゃんから聞いたのでしょう。

私はその子に呼ばれるたびに心が暖かくなって行く事に気がつきました。

――――ヤメテ ワタシハニンギョウ ココロナンテナイ ナニモシラナイアノコガニクイ

私は自分を人形から”人”に変えるあの子が憎いと思いました。

しかしその一方で、あの子なら私を連れ出してくれるかも。

助けてくれるかも。

と心の隅で期待している自分がいたのです。



そして、何日か経ち事件が起きました。

――――あの子が屋敷を出る原因となった事件が。

その日は珍しく昼間から、槙久様が私の感応の力を求めて来たのです。

終わった後理由を尋ねた所、「やっとこれで最終段階だ後はあの小僧を殺すだけ」と言い部屋を出て行きました。

私は直ぐに理解しました――――あの子が殺される。

私は四季様なら止められると考え、四季様に伝えました。

走って四季様の部屋へ行き、私は四季様に話します。

その後四季様も血相を変え、屋敷を急いで出て行きました。

―――後に残った私は祈るだけでした。でも何を祈ったかわかりません。多分その時から私の復讐の第一歩が始まったのでしょう。











その日は何か変だった。

いつもどおりの場所に行くと誰もいない。

僕はみんな寝坊したのかな?

と思ってその場所で待っていると、誰かがやってくるのが見えた。

そして、やって来たのは・・・。

四季でもなく秋葉や翡翠ちゃんでもなく槙久だった。





「死んでもらうぞ、志貴」

そう言うやいなや槙久は僕に向かって突進して来た。

どうやら殺す気らしい。

それはそれで――――。





「ちょうど良かった」

僕もあの時からお前を殺したかったんだよ!

僕は槙久に向かって走りだした。

槙久の繰り出して来た腕を屈んでよけ、そのまま勢いを落とさずに飛び上がり、槙久の首に蹴りをくらわした。






 

――――閃走――――六兎――――




当てた瞬間ゴキッという首の骨の折れる音がした。

「フン、こんなものか・・・」

僕はつまらなさそうに吐きすてた。が、次の瞬間――――。





「フハハハハハさすがは七夜だ、こうでなくては面白くない」

「バカな!確かに首の骨を折ったはず、何故生きている槙久!」

今は絶対に首の骨を折った手応えがあった。だから、生きている筈が無い!

それなのに、何故コイツは平然と立っていられるんだ。





「やはり、私の暗示は効いてなかったか。まあいい、死に行くお前に教えておいてやろう私の能力は『暗示』と『不死』、
 それに――――イヤ、これはいいだろう。故に私を殺すことは出来ない」

「何!?」

不死だって!?何て厄介な能力だ。

一体どうすればいい。

これでは、殺す術がない。





「さて、これがかわせるかな?」

槙久はまた突っ込んで、無数の突きを繰り出して来る。

赤い鬼人の例もあり、かすらせないように注意して僕はかわし続けた。





「さすが、七夜。今の攻撃でかすりもしないとは」

「七夜をなめるな!」

僕は一つの結論を出した。

殺せないなら、意識を断ち切るしかないっ!

その為に、槙久に接近するため走り出す。

蹴りが槙久から僕の頭に放たれたが、地面に着くぐらいに上半身を倒して躱す。

蜘蛛のような動きで槙久に接近すると、その勢いで槙久のみぞおちを蹴りあげる。





「ガハッ」

これだけでは終わせない。

僕は地面を蹴って飛び、その反動で更にみぞおちを蹴りあげて、槙久を宙に浮かせ続ける。

それを3メートル位の高さまで繰り返し、両足で地面を思いっきり踏んで追いつくように飛ぶ。

追いついた所で、僕は足を引っ掛けて槙久の体を半回転させる。







――――極死――――








僕は両足を、上に向いた状態の槙久の両胸の所に置く。

足を両肺に置いたまま地面に向かって落下して行く。

グシャという音と共に、重力と地面のサンドイッチになった槙久の肺は潰れ背骨が折れる。







――――双牙――――








「ハアハア・・・これなら大丈夫だろう」

意識を断ち切れたはず・・・・・・。

しかし、槙久は何事も無かったようにゆっくりと立ち上がった。





「これでも、駄目なのか」

「今のは危なかった、もう少しで意識が飛びそうだったぞ」

「こっちはその気でやってるんだっ!」

「これでわかっただろう、私を倒すのはお前では無理だ・・・・・そろそろ死ね」

そういうと槙久は今までで一番早い突きを繰り出して来た

僕は突然の事で避けることが出来ず、かろうじてガードは出来た・・・が、槙久の力によってガードごと吹き飛ばされ木に激突する。





「ガッ・・・」

そして倒れる暇も無く、目の前には槙久が迫ってきていて、左手で突いてきた。

僕は体を何とかずらしてかわそうとしたが、その途中で槙久の手が止まる。

その突きはフェイントだった。





「クッ・・・!」

僕が体をずらした所に槙久は、すかさず右手で拳を繰り出して来る。

僕は意表をつかれたものの、後ろの木を蹴って槙久ごと飛び越えてなんとか躱す。

背後からバキッという音が聞こえたので振り向くと、槙久の拳が木を貫通していた。





「まさか、今のをかわすとはな。中々しぶといやつだ。やはり本気でいかんと無理か」

右手を抜いてそう呟くと、槙久の氣が変化した。

槙久の氣があの時より、強くなっている。





「槙久、一体何をしたんだ!そこまで強くなれる訳が無い」

「気づいた所でわかるまい。そうだな、教えてやろう。琥珀の感応の力を使ったのだよ」

「・・・だからお前は、琥珀ちゃんにあんな事を」

「知っていたのか・・・まあいい、いい加減にそろそろ死んでもらうか」

槙久は今までとは比べものにならない程のスピードで突っ込んでくる。

そのスピードのまま僕の懐にやってきて、僕の胸を手刀で貫こうとした。

・・・が、その時。





「親父ぃっ!」

声がどこからか聞こえてきて、槙久が僕を貫く寸前で一瞬止まった。

僕はその隙を見逃さず、発勁をぶちこみ槙久をふっ飛ばす。











今日の親父は何かオカシイ。

今日は外に出るな、と訳が分からん事を俺に言ってきた。

もちろん俺は、何故だと聞く。

お前には関係ない、と言ってきた。

いつもなら言いかえしてやるんだが、今日はいつもと様子が違ってたから渋々引き下がる。

俺はそのまま自分の部屋へと戻る。

それからしばらくすると、琥珀が珍しく俺の部屋にやってきた。

何か焦っているみたいだったが、俺は普通に琥珀に声をかける。



琥珀から聞いた言葉は、信じられなかった。

内容は、志貴が殺される。と、とんでもない話。

それを聞いて、直ぐ外に駆け出した。

――――この時俺は、秋葉と翡翠に外に出るなと言っておけばよかった。と、後で後悔する事になる。



森を抜け、いつもの待ち合わせ場所だった所に、俺は必死になって走った。

木に掠りながらも必死に走る。

やっと辿り着いて、俺が二人を見つけた時には、親父が志貴を殺そうとしてた所だった。

それを見た瞬間俺は叫んでいた。

少しでも気を引ける様に大きな声で。

そして次には、親父が志貴によって吹っ飛ばされていた。









「四季、助かったよ」

「今何で、親父は吹っ飛んだんだ?」

「発勁というやつでね、氣を練り送り込むことで相手にダメージを与えるんだ」

「お前凄い奴だったんだな」

「それほどでもないよ――――でも全力でやったから、普通気絶するぐらいはあるんだけど・・・」

そこで、僕は槙久の吹っ飛んだ場所を見た・・・。

案の定、何事も無かったように槇久は立っていた。





「外には出るな。と、言っておいたはずだぞ四季」

「ハァ・・・やっぱり効果ないか」

「志貴、何故親父は立てるんだ?気絶するんじゃないのか?」

「槙久は『暗示』と『不死』という能力を持ってるんだ。だから四季も気をつけろよ」

僕が四季に注意していると、槙久が喋りだした。

喋りながらも、ゆっくりとこっちに向かって来る。





「喋っている暇があるのか?それと四季、そこをどけ」

「嫌だね、親父がどっか行けよ。志貴を殺させてたまるかよっ!」

「頭の悪いヤツだ・・・仕方ない。四季お前には気絶していてもらおう」

「グ――――ァ」

槙久が四季に目線を合わせると、突然四季がその場に倒れた。

僕は何が起きたのか理解できない。





「四季どうした?一体何が?!」

「・・・これが、親父の暗示か・・・強烈・・・・だな」

「ほう、私の暗示を耐えたか。さすが私の息子だ、さっきの言葉を取り消すぞ。それよりいいのかね志貴?余所見をしていて」

四季が倒れた一瞬、僕は槙久から注意がそれた。

たった一瞬、しかしその一瞬が殺し合いには命取りだった。

僕がそれに気づき、槙久に注意を向けた時には既に遅く。

槙久の手刀が突き出されようとしていた。

僕は完全に意表をつかれて、動く事さえ出来ない。





「・・・クソッ」

――――『死』

頭の中をその言葉が過ぎった瞬間、誰かが目の前に割り込んで来た。

黒く長い髪。

それは――――。





「だめぇっ!」

震えながら大声をだす秋葉だった。

このままでは、秋葉が死ぬ。

そう思った時、僕の手は自然と動いて秋葉を突き飛ばす。

そして僕は、槙久の手刀を胸に喰らってしまった。

血飛沫が辺りに飛び、意識が薄れていく。

薄れ行く意識の中で、僕が最後に聞いたのは――――。

ズプッという音と、誰かの悲鳴の様な声。

その声を聞きながら、僕はだんだんと意識が――――遠くなって――――いっ――――た。





――――四季は光を失い、志貴もまた光を失う。

二人のシキは闇に閉ざされ、他の二人もまた闇に囚われる。

少女を含め、闇に閉ざされた五人に光が点るのは何時の事か・・・。

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