焼け付くような朱の陽炎。

押し潰すほどの圧倒的力。

鬼の血。

純粋なる魔。

その名は――――――軋間紅摩。





真 月 伝






ツメタイ月の光が射す森の中。

一つの影が木から木へと飛んでいく。

視認する事も難しく、そこに居ると思った瞬間には既に消えている。

影の名前は―――――七夜志貴。

遠野という混血の襲撃をうけた七夜一族の一人。

現当主の七夜黄理の一人息子で次期当主。

次期当主―――――その座は幻に終わる。

七夜は既に志貴以外いないのだから。



暗闇に冷やされた大気が僕の頬を撫ぜる。

空にはイヤな雲が出てきて、月を覆い被していく。

天がこれから起こることを象徴している様だった。

木から木へ飛び移り、程なくしてその場所へ辿り着いた。

そこで僕が見たものはあまりにも異常で無残な物だった。

何故なら、周りにある筈の木は燃え尽きて無くなっており、戦いの後からか地面が所々抉れている。

更にそこにいたのは・・・・・・・。

ただ立ちつくしているだけの右目を髪で隠している男だけ。

その男の周りには朱い陽炎のような物が立ち昇っている。

――――ヤバイヤバイ。

七夜の血が悲鳴をあげているが、僕は逃げるわけにはいかない。

逃げ出せば七夜の名が廃る。





「そういえば――――」

木の上から父さんを探すが何所にも居ない。

――――万が一死んでいるという事もあってじっくり探してみても気配すらない。

僕は本当に実感してしまった。

父さんが――――死んだという事を。

もう何が何だか分からなかった。

――――母さんも死に父さんも死んで皆も死んだ。

今日起こったことを全て夢だと思いたかった。

だが・・・・・現実。

立ち込める血の臭いが、未だにパチパチと燃えている木が現実だと知らせる。





「・・・・・・来たか」

男がこちらを向き小さく呟いた。

何て呟いたかは聞こえなかったがそんなもの気にしていられない。

――――バレた!?

そうバレたのだ。

気配は完全に隠している。

父さんならともかく、他の奴にバレる様な事は今まで決して無かった。

相手の氣が分かる以上気配を隠す事は人一倍優れている、と思っていたのに。

全てをこの男に壊されたような気がしてならない。

――――だから深く考える。

気配を完全に絶っている相手を見つけるには、父さんの能力。

あるいは、僕みたいな氣をよむ事以外に方法は無いはず。

・・・・・・・・・・まさか、まさかそんな。

僕と同じ氣をよむ事ができるのか?

でも、イヤそうとしか考えられない。

場所がバレている以上隠れていても仕方がないので、男の前に姿を現す事にした。





「お前僕の父さんをどうした?」

七夜の血が、生としての本能が、ニゲロニゲロと警鐘を鳴らしている。

僕はそれを無理やり抑えて男に尋ねた。

尋ねられて男は閉じていた目を開く。





「やはり、お前はあいつの息子か」

男が言った言葉は信じられなかった。

やはり?

確かにやはりとコイツは言った。

意味が――――ワカラナイ。



「どういう・・・・・・ことだ?」

「少し前お前の父親と同じ様な氣を感じた。それが気になってここで待ってたらお前が来た。お前がここに来たということは、お前も氣を感じ取れるのだろう?」

最悪な考えが当たってしまった。

コイツは僕と――――同じ能力だ。

相手の氣をよみ何所にいるか感じ取れる。

相手がそれ以上なのかは分からないが、僕は相手の気持ちを少しだけ――――端的にだが――――感じ取れる。

確かにこの能力の前では死角から攻撃する、という七夜の戦法は通用しないだろう。

――――だがそれだけで父さんが負けるだろうか?

それだけじゃないはずだ。

この男――――コイツにはそれ以外の能力もある筈。

それは多分木々が燃えていた事に関係するだろう。





「僕の名は七夜志貴。察しの通りお前と戦った、七夜黄理の息子だ。お前の名は?」

魔に対して自分の名前を名乗ったこと等コレが初めてだな。

等と心の中で考えられるほど、七夜志貴にはまだ余裕があるらしい。

いつの間にかニゲロという警鐘は治まっていた。

会話しただけで治まるなんて現金だな。

僕は苦笑する。





「軋間・・・・・・紅摩」

男はぶっきらぼうに自分の名前を名乗った。

その名前は確か聞いた事があった。

確か父さんが――――。





「オイ、バカ息子覚えとけこの世にはな俺と同じぐらいの力の奴がいる。俺の知っている中では一人だがな」

「誰?」

「そいつの名は軋間紅摩。又の名を
赤い鬼人。反転しているらしく混血の中で最も強い奴だ。」

「混血と反転ってなんなの?」

「混血というのは鬼種と交配した人間の血が代々流れ続いている一族の事をいう。軋間っていうのはその鬼種と交配をえんえんと繰り返 し鬼の血を強く保った一族だ。
 反転というのは混血が自らの中に眠る血を最大限に引き出した状態のこと。そして自分の血に飲み込まれる事を
紅赤朱と言う、覚えと け」

「紅赤朱って?」

「めんどくさい奴だな、紅赤朱は決まって蜃気楼のような靄につつまれ、とんでもない能力を持ったやつだ。簡単に言えば人であって人で はないものだ。もういいか?」

「ありがとう父さん」

――――って言ってたな。

という事はコイツがその。

赤い鬼人で――――。





「紅赤朱か」

「俺を知っているのか?」

「ああ、父さんが教えてくれたからな。それでお前の紅赤朱としての能力で父さんを消したのか」

僕はこいつに勝てるのだろうか?

父さんですら適わなかったコイツに。

――――だけど。

・・・だけど、やるしかない。





「これから起こる事の前に一つ言っておく、俺はまだ完全に紅赤朱ではない」

「な・・・・に?」

「これ以上の会話は皆無」

赤い鬼人はもうこれ以上喋ることは無い、とでも言うかの様に戦闘態勢をとる。

まだ聞きたかった事があるが、相手の態度が態度だからこちらも戦闘態勢をとらざるを得ない。

七つ夜からパチン、と刃を出し上半身を地面スレスレまでに倒す。

両者の準備は整った。

後はキッカケさえあれば飛び出すだけ。

僕はそれまでに緊張感をギリギリまで引き絞る。

頭の中はたった一つの言葉でいっぱいだった。

――――コ ロ せ。

その言葉が頭の中でリフレインしている。

相手を見据えてキッカケを待つ事数秒。

雲に隠れていた蒼い月が顔を出した。

両者の間にスポットライトの様な、一筋の光が射す。

それがキッカケとなる合図。

――――――――この死闘の合図だった。





「行くぞ、七夜の倅」

言うや否や赤い鬼人はその巨体に似合わないスピードで、一直線に突っ込んで来る。

攻撃範囲に入った途端、左手をなぎ払ってきた。

それは技術も何も無く、ただ力で相手を殺す為の純粋なる攻撃。

攻撃というのかもバカバカしい程の暴力。

力があるが故の単純な暴力。

そんな力任せの攻撃が当たる程――――七夜志貴は弱くない。





「遅い!」

僕は左手の繰り出す攻撃を、一足で前方に飛び込んで相手の懐に入ってかわす。

懐に入った所ですぐさま飛び上がり、七つ夜で首を斬った・・・・ハズだった。

ナイフが首に当たった瞬間ガキィィン、と甲高い音が鳴り響き手に衝撃が走った。

思わず落としそうになった七つ夜を握り締め着地をした瞬間にバックステップする。

先程僕が見た物――――ナイフが首を切断していなく皮膚で止まっていた。





「バカな・・・・・・・・!!!!」

僕は驚く暇も無く危険を感じて更に後ろに跳んだ。

跳んだ瞬間にさっきまで僕が居た所に赤い鬼人の腕がめり込んでいた。

咄嗟に後ろに跳んで回避したものの、ゾッとした。

――――アレを食らったら一撃で七夜志貴なんていう存在は原型も無くなる。

即ち――――死。

冗談じゃない。

向こうには一撃与えてもピンピンしているのに、こっちは一撃でも致命傷だ。

これでは不公平もいい所。

だけど、そんな弱音なんて吐いていられない。

何故なら赤い鬼人が既に目の前までに迫って来ているから。





「――――チッ」

右手での水平の一振り。

その高さは丁度僕の頭のある所だ。

僕はひざを曲げて体を沈ませる。

一瞬遅れてその上をとんでもない風圧が通り過ぎた。

冷や汗を掻きつつも、攻撃の終わりを狙い踏み込もうとして――――ヤメタ。

さっきの攻防を警戒してか、赤い鬼人の左手が攻撃仕掛け様としている事に気づいたからだ。

懐に入った途端左手であっという間に終わるだろう。

だから踏み込まずに更に後ろに跳んだ。

赤い鬼人はこの行動が読めなかったのか、左手を下から上に突き上げる。

だがその場所に――――七夜志貴はいない。

当然の如くその攻撃は空振りに終わる。

なのに左手を繰り出した風圧が、僕のところまで届いてきた。





「――――なんて力だ」

僕は呟き更にバックステップする。

後の木に寄りかかり一回目の攻防の時の、首を切断出来なかった事について考える。

あの鋼みたいな体と鬼みたいな力、が紅赤朱としての能力なのか?

――――いや違う。それだけなら木が燃えるはずは無い。

ということは・・・・。





「――――っ!少しは考えさせろよ」

結論に至る前に考えを中断する。

否――――中断させられる。

五メートルぐらいの距離を、赤い鬼人が一瞬にして零にしたからだ。

赤い鬼人は手を高速の速さで突き出してくる。

僕は後の木を蹴って赤い鬼人を飛び越す事で、その攻撃を躱す。

地の利を生かしながら戦うのが七夜の戦法。

この場合は木を利用しての攻撃の回避。

僕は音を立てずに着地して後ろを振り返る。

振り返って見たものは――――大木を紙屑みたいに握りつぶしている赤い鬼人。





「嘘だろ?!」

その言葉には二つの意味が込められている。

一つは握りつぶした事について。

もう一つは握りつぶした所から、炎が出て来て一瞬で木を燃やし尽くした事だ。

ここで初めて僕は――――理解した。

アレが赤い鬼人の紅赤朱としての能力だという事に。

発火――――いや、発火すら生温い。

言うならば全てを燃やし尽くす劫火――――灼熱。

そう『灼熱』だ。





「何てヤツだ」

あんなものがあったんでは、父さんでも負けるはずだ。

――――いや普通では勝てない。

どうすればいいんだ!?

体は鋼、力は鬼、能力は灼熱。

こんな出鱈目な事があっていいのか?

今日ほど自分の無力さを味わった事など無い。

だけど・・・だけど、諦めちゃダメだ。

諦めたら――――――
シヌ。

死ぬ?

シヌ?

ボクガシヌ?

イヤダイヤダイヤダイヤダ――――――シヌノハイヤダ。

僕は腰に装着している鞘から月夜を取り出す。

七つ夜と月夜の二刀流。

左手に月夜、右手に七つ夜。





「――――――」

赤い鬼人に向かって行く。

ヤツは右手を出し掴み掛って来るが、それを右に飛んでかわす。

かわした所に繰り出して来た左手の突きも、屈んでギリギリかわす。

後ろ足で土を思いっきり蹴り上げて、腕の引きよりも早く相手の懐に飛び込む。

飛び込んだ所で直ぐに、首を月夜で斬りつけた。

斬りつけたが、やはりガキィィンという音だけで切断は出来ない。

それでもそれなりに効果があったのか、首には一筋の赤い線が流れ出す。

出来る限りの力を入れても、たった数ミリ程度の傷しかつける事は出来なかった。

直ぐに俺は相手から離れ距離を取る。





「刃物では俺には勝てん、いや外からの攻撃では俺に勝つことは無理だ」

赤い鬼人が僕に言う。

――――――外からでは勝てないと。

ヤツが放った言葉に何か引っかかった。

ヤツは外からと言った・・・・・。

外――――――外側?

外からの攻撃では無理?

だったら外からじゃなくて――――――!



「・・・・そうか、わかったよ」

僕は一つの考えに辿りついた。

その考えを実行する為に、七つ夜と月夜をしまった

今からする事それは――――――外がダメなら内から攻撃するという事だ。

これが通用しなかったら完全に僕の負け。

一発勝負。

――――――ヤルカヤラレルカ。

内臓までは硬く出来ない。

辿りついた結論は至ってシンプルだった。

シンプルだけど実行するにはかなり危険な賭け。

あいつの懐に飛び込んで、直に触れなければいけない。

もう一回――――――あの冷や汗モンの事をしなくちゃならない。

だけど・・・だけど、やらなければいけない。

僕が生き残る為。

無念を残して散って行ったみんなの為に。





「行くぞ」

僕はこれに賭けるため赤い鬼人に近づく、が。

ヒドク猛烈にイヤな予感がして、間髪おかずに今居た場所から飛び退いた。

飛び退いた瞬間にヒリヒリと空気が焼け付くのを感じる。

後ろを振り向くと、僕が居た場所は炎が立ち昇り陽炎が出来ていた。





「なっ!?これは・・・・・まさか」

僕はすぐに赤い鬼人を見る。

ヤツはこちらを向いており、ヤツの周りにも陽炎が立ち昇っていた。

焼け付く様な朱。

全てを燃やし尽くす様な緋。

赤よりも遥かに濃いアカ。





「気づいたか、お前の思っている通りだ」

ヤツの視界内に入れば、問答無用の死。

一瞬で終わるだろう。

なんて――――――厄介。

だけど・・・だけど、大丈夫。

硝るまで若干のタイムラグがあるし、あいつは片目を失っている。

故に視界範囲は狭いハズだ。

だから相手の死角、左側から攻めれば勝てるかも知れない。

僕は左側から攻めるために走り出した。





「・・・・・・・」

赤い鬼人は、刀をしまい手ぶらになった僕を見て何か感づいた様だ。

その証拠に、さっきまで僕を簡単に懐に入れていたのに、そんな隙を見せなくなった。

コイツの戦闘能力は普通じゃない。

危機回避能力がズバぬけている。

僕を懐に入れさせないために、赤い鬼人の腕が右に左に無数に振るわれる。

その度に冗談じゃないほどの風圧がやってくる。





「チッ」

一振りでも当たれば僕は――――――
死ぬ。

その死ぬか死なないかの刹那の攻防が、いつの間にか僕自身楽しくなってきた。

我ながら恐ろしいと思う。

こんな事が楽しいなんて。

僕は必死になって避け続ける。



それがいつまで続いたかは覚えていない。

何分、何十分いや何時間?それともまだ何十秒も経っていないかもしれない。

気がつけば永遠とも思われる時間が続く中で、僕は必死に避け続け隙を作ろうとしていた。

そのために僕は攻撃を避けるたび、腕や首に蹴りを浴びせ続けている。

僕の蹴りは本気を出せばバット十本ぐらい楽に砕ける・・・と思う。

そんな蹴りを食らわせてもコイツには・・・赤い鬼人には、まるでダメージが無い。

意に介さずおかまいなしに当たれば一撃必殺の腕を振るってくる。

だけど、僕もダメージが無い事ぐらい分かっている。

分かっているけど、敢えて繰り返し続ける。

狙いはダメージを与える事じゃない――――――隙を作る事。

ほんの僅か一瞬でもいい、懐に飛び込めるほどの隙が僕には欲しい。

そのため僕は、屈み、避け、跳び、蹴る、をひたすら愚直に繰り返していた。

何度目かの攻防、何度目かの接近。

既に百を超えただろうか、と思った時。

赤い鬼人に変化が起きた。

拳一辺倒だった攻撃が蹴りも織り交ぜてきたのだ。

注意を上に引き付けておいてから、突然の下からの攻撃。

僕は身を捻ってかわそうとしたが、咄嗟の事だったから完全にかわす事が出来なかった。

その結果、わき腹にかすってしまった。





「ガッ、グハァ・・・・ゲホゲホ」

かすっただけなのに僕は吹っ飛ばされて、地面を転がり続けた。

ようやく止まったところで地面に手を付き口の中に有る血を吐き出した。





「――――――っ!」

僕は自分に迫る死を感じ、すぐさま後ろに跳んだ。

頭があった所に突き上げるような蹴りが来たから。

着地をした時にわき腹に痛みが走った。

わき腹がズキズキする。

もうこれでは素早い動きは出来ないだろう。

僕は悟った――――――次の攻防が最後になる、と。

――――――その最後に賭けようと・・・。

赤い鬼人が目の前までに迫る。

ヤツは自らの手で殺す事に決めた様だ。

じゃなかったら、灼熱を連発しているハズ。

ヤツの右手が止めを刺そうと僕の頭に振るわれる。

僕はわき腹の痛みをごまかして、全身の力を振り絞り屈んで避けた。

傷ついた僕に、今の一撃がかわされるとは思っていなかったのだろう。

止めを刺そうとしたが故に、力の入った赤い鬼人の体が一瞬流れた。

ほんの一瞬、一秒にも満たない僅かの隙。

コロシアイには致命的なスキ。

僕はその一瞬のスキを見逃さず、懐に飛び込んだ。

やっと巡って来た最後のチャンス。

そして・・・・。





「くらえ」

僕は赤い鬼人の右わき腹に手を沿え、全力で氣を送り込んだ。

ぞくにいう発勁と呼ばれるものである。

発勁は内に衝撃が走る。

これならいかに頑丈だろうが倒せる。

赤い鬼人もこれは意外だと思ったらしい。

僕はこれで、勝ったと思った・・・・その時

ズキン、ズキン。

誤魔化していたわき腹の痛みが、油断した隙に襲ってきた。





「ガハッ」

僕はその痛みに耐え切れず、氣の力が緩んだ。

そのせいで僕の発勁は完璧な発勁じゃなくなった。

完璧な発勁ならいくら赤い鬼人でも倒れた事だろう。

だが、完全じゃなかったから――――――。





「グァ・・・・ハァッ」

左手で反撃された。

僕と赤い鬼人は共に反対の方へと吹っ飛んでいく。

吹っ飛ばされて、背中から木に激突してしまった。





「しまっ・・・た・・・・・」

衝撃で意識が薄れてきた。

僕はだんだんと意識が薄れていく中、ふと空を見上げた。

空には、とても綺麗な蒼い満月が浮かんでいた。

とても――――――悲しそうで。

とても――――――大きな月。

気付かなかった。

ああ――――。

今夜はこんなにも――月が――――きれい――――――だ。

・・・・そして、僕は完全に意識を失った。







「クッ、油断したか。まさかここまでやるとはな」

赤い鬼人、軋間紅摩が片膝をついていると、一人の男が複数の護衛を連れてやってきた。

傷一つ無い体で。





「槙久か?」

「よくやった、紅赤朱。しかしお前に傷を負わせるとは、先ほど私の前にも姿を現したが、あの小僧は何なんだ?」

「七夜黄理の息子だそうだ」

「なんだと!それで、名前は?」

「七夜志貴と言っていた」

「シキだと!クククハハッハハハこいつは面白い私の息子と同じ名前とはな。・・・さて帰るぞここにはもう用はない」

「七夜の倅はどうする?」

「私の家へ連れて行く」

「いいのか?顔を見られてるんだろう?」

「いいさ、私には暗示があるしな。どっちみち七夜の子供を連れて行くつもりだったからな。
 それが四季と同じ名前、これを運命といわずして何と言える!」

槇久は愉快そうに笑い声をあげる。

自分の自分の思い通りに行っている事が愉快だと言わんばかりに。





「何のために連れて行くんだ?」

「私の計画のためだ。本来の血ではなく力も必要だろう?」

「遠野を最強にするため七夜の力を取り入れるのか?」

「そうだ、そのためには早く計画を進めなければならないが、少し時間がかかる」

「その計画とは?」

「今はまだ言えん。しいていうならば感応とだけ言っておこう」

「そうか・・・」

いくらお前でも七夜の倅が殺せるわけ無いだろうが。

ここまで、この俺を追い込んだんだからな。

ズキンッ

グッ・・・それにしても発勁をしてくるとは、完全に予想外だった。

今より強くなれよ七夜の倅よ・・・。

俺を殺せるほどに・・・・・・ 。






――――――七夜志貴は遠野槙久によって連れて行かれた。

後に残ったのは誰もいなくなった七夜の森。

そして、屋敷だった所にひっそりと隠されている――――――。

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