この物語は一人の少年の物語

しかし、本来とは違った道を歩んでいく

それでは、この少年の行く道をご覧あれ・・・・・











真 月 伝











僕はクライ部屋で目を覚ました。

クラヤミに覆われている部屋。

唯一の光は外から差し込む、淡い光を放つ月光のみ。

何故か屋敷内に誰の気配も無い。

それどころか、遠くの方からは沢山の氣と変な音が聞こえてくる。

その中に一際大きい氣が二つあり、互いに戦っているのが解る。

戦っている内の一つの氣は知っている。

僕の父さん、七夜黄理だ。

父さんのは分かるけどもう一つの方が解らない。

父さんと同等位の氣を出している。

そんな人は――――――七夜の里にいない。



僕は嫌な予感がした。

何の予感だか分からないけど、ともかく嫌な予感がした。

第六感というモノかもしれない。



とにかく僕は、七つ夜と刻まれたナイフと日本刀位の長さである七夜の宝刀”月夜”を手に取り外に駆け出した。

玄関を飛び出し、一目散に七夜の森の中へと走っていく。

淡い光を放つ月を背に、クラクツメタイ森の中を僕は走る。

走っている間に一つ、一つ、と僕の知っている氣が消えていく。

僕はこの時になって何が起こっているかを理解した。

――――――七夜が敵と戦っている。

何所の奴らかは知らないけど、七夜の方が不利な状況だ。

そんなことがありえるのだろうか?

七夜が敵に攻められている上に負けているなんて。

僕が必死になって走っている間にもどんどん氣が消えていく。





「みんな・・・・・・」

僕は知らず知らずの内に泣いているようだ。

何故なら一緒に暮らしていたみんなが――――――シンデイク。

スゴク悲しくて、走りながら僕は泣いていた。

悲しい考えばかりが浮いてきてしまう。

最悪な考えを振り切る為にガムシャラに走り続けた。

この目でちゃんと確かめるために。





「ハァ、ハァ、ハァ――――――そ・・・・・ん・・・・・な」

どれ位走っただろうか。

ポッカリと開けた森の広場で僕は足を止めた。

僕は見たモノが信じられなかった。

僕が見た物それは――――――。








手足がバラバラになっている、七夜の人たちだった。







「う・・・そ・・・・・だ」

その場所は真っ赤に、赤く紅く朱く緋くアカク染まっていた。

視界いっぱいのアカ。

理解できない。

いや、頭では理解している。

頭では理解していても、心が否定し続けている。



――――――チガウ。



――――――ウソダ。



――――――コレハユメダ。



夢だと思い続けていても、風が運んでくる血の臭いで現実だと知らされる。





「一体誰だよ・・・・・こんな・・・こんな事するなんて」

七夜が”人”相手に負ける事などありえない。

だったら――――――相手は人じゃない?

人じゃないとしたら、一体誰だ?

僕は氣を集中させ気配を探る・・・すると、ところどころから人と魔が混じったような気配がした。





「――――――そうか」

これは父さんから聞いたことのある”混血”とかいうやつらか。

一体七夜が何をしたというんだ?

七夜の皆は平穏に暮らしていたのに。

なのに、なのに何で邪魔をするんだ。

絶対に――――――ユルサナイ。



僕はココにいる、バラバラになったみんなのお墓を作ろうと一人一人顔を見て周った。

みんなの顔を見て周り、ある人の前で――――――足を止めた。

いや、足を止めざるを得なかった。

その人を見た瞬間、何もかも信じられなくなった。

頭の中が真っ白になって、何も考えられない。

呆然とした状態で、唯一分かった事。

僕が足を止めた目の前にいたのは――――――――――僕の母さんだった。





「あ―――――あ、ああああぁあああぁああぁァアアァアアアア」

大好きな母さん。

大好きな母さんが―――――シンデイル。







プチンと僕の中の何かが完全に
――――――――――キ レ タ。

僕は泣きながら、拳を握り唇を噛み締め誓った





絶対に絶対に一人残らず
――――――コ ロ シ テ ヤ ル。





「ごめん・・・ごめん、母さんみんな。こんなお墓しか作れなくて」

僕は一人一人の簡単なお墓を作っていった。

最後に母さんのお墓を作り終えた。

母さんの墓を作り終えた後、後ろに魔の気配がしたので振り返る。





「坊主も七夜か?」

そこにいたのは銃を携えた奴らだった。

僕は見ただけで、こいつらが混血と呼ばれる奴らだと確信した。

なるほど、銃を持っていたのか。ならばいくら七夜でもやられる訳だ。

一発でも当たれば致命傷だ。

ただ、それは油断さえしなければいいだけの話。

それに今の僕には関係ない。





「そうだよ。一つ聞くけど、おじさん達がここにいる皆を殺したの?」

僕は努めて冷静に聞く。

その間にも、心臓がドクンドクンと鳴る。

――――――コロセ。

七夜の血が騒ぐ。

――――――――ハヤクコロセ。

もう少しもう少しと心を押さえつける。





「ああ、そうさ。ここにいるやつら以外でも殺してやったがな」

ドクンと心臓が強くなった。

ここにいる以外の人も殺した?

まだ僕より小さい子もいるのになんて奴らだ!

一体誰だ?こいつらに、こんな事をするように命令を出したのは?

そいつだけは、この身が滅びようと絶対に
――――――コ ロ シ テ ヤ ル。





「それにしても七夜もバカだよな、武装した遠野の兵と真っ向から戦うなんて」

一人の違う男から出た言葉は、今の僕にとって火に油を注ぐのと同じだった。

そうか敵は遠野というのか。

僕は、知りたかった敵の名前が解ったから、この血の衝動を抑えるのをやめた。

――――――ヒ ト リ ノ コ ラ ズ コ ロ シ テ ヤ ル。





「そう、わかったよ」

ここにいる敵は全部で四人、みんな銃を持っているが僕には関係ない。

僕は奴らに見えないように七つ夜を取り出した。





「じゃあ坊主悪いがさよならだ」

そう言って僕に近い一人の男が銃を向けてきた。

ああ――――――イライラする。

自分たちが既に勝った気でいる。

なんて――――――愚か。

もうこいつらの顔を一秒でも見たくない。

だから――――――コロス。










「さようならだね・・・・・・・・・・・・・・・・・
おじさん達が

次の瞬間、近くにいた男の首を刎ねてやった。

その男は何が起こったか解らずに死んでいったことだろう。

立て続けに二人目の男の首も続けざまに刎ね飛ばした。

その時にようやく一人目の男の首から
ブシュッが噴出した。

――――――後二人。

残りの二人とは距離があったので、僕は気配を消して森に隠れた。





「くそっ何だあのガキは」

「何所行きやがった」

残った二人は僕を見つけようと必死に見回して探している。

なんて――――――隙だらけ。





「おじさん達に僕を見つけることは無理だよ」

僕は気配を隠したままそう言った。

本来殺し合いに会話など無用だが、この場合は挑発の意味合いを込めている。





「何所に居やがる出て来い」

狩られる側と狩る側の立場が変わるなど、彼らは微塵にも思っていなかっただろう。

僕はそんな姿を見ていると可笑しくなって、思いっきり笑いたくなってきた。

しかしそれはしてはいけない事。

それをしたら相手に位置がバレてしまう、そんなのは七夜失格だ。







「フフ、おじさん達そんな物で僕が殺せるとでも思ったの?」

だから僕は軽く笑う事にした。

だが、僕がそうしている間にも他の場所で、里の皆の氣がだんだんと減っていっている事に気がついた。

僕は他の奴らと遠野とかいう奴を殺しつくすため、早くこいつらを殺す事にした。

いい加減、コイツらの顔を見るのにも飽きてきた。








「七夜に逆らいし愚か者よその身の死をもって罪を償え」



そしてすかさず真下にいた男を
ザシュッっという音を立てて殺してやった。

それに気づき僕の姿を確認した最後の男が銃を撃ってきたが、

焦って撃った銃弾なんか当たるわけが無い。



僕は上半身を倒し地面ギリギリに身を屈めて銃弾をかわして、

後ろ足で地面をけって常人離れした速さで最後の一人の懐に飛びみ

すれ違いざまに言い放った。







「そんなもんじゃ僕は倒せないよ・・・・・・バイバイ」














閃走――――雷光











通り過ぎたときには男の体は一瞬の内に
両手、両足、首と五個に解体されていた。



呆気ない。

本当に、呆気なくて弱い。

――――――解体された混血を一瞥して、七夜志貴はそう思った。



僕は混血を殺し尽くすべく意識を集中させた。





「近くに大きな氣が二つ、父さんか。父さんなら大丈夫だな。ということは向こうが魔か」

僕は父さんなら勝てるだろうと思い、混血達を狩りつくす為にその場を離れた。

僕はこの時知らなかった。すぐに父さんの所へ行けばよかったということを。







――――怒りに燃える子供は殺人貴となり闇夜を駆ける、自分の一族を殺した魔を殺すために。

しかし、子供はまだ知らない。自分の犯した間違いを・・・。

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