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――――――1994年 春。

クラス替えを終え、それぞれが自分のクラスに入っていく。

みなそれぞれの服装で自分を表現している。

部屋を見回すと、二人の人物が気に掛かった。

一人は――――――着物姿の女。

藍色の着物という時代錯誤な格好。

黒く綺麗な髪を肩口ぐらいで乱雑に切り、男か女かわからないほど整った顔。

深い、深い、こちらの中にあるものを見透かすような静謐で漆黒の瞳。

それとは対照的に肌は透き通るように白く白く、黒と対となるためにこちらもこの上なく完全な白。

立っているだけでそこが根本から変えられるような存在感に、今にも崩れ落ちそうな危うさを含んだ、矛盾。

立居振る舞いに一切の無駄が無く感情らしい表情を顔に出さない少女。

両義 『式』

同じ名前の発音をする女。



――――――そして、もう一人。

上下黒の服で統一している男。

俺と同じ黒ぶちの眼鏡。

人を憎むという事を知らなさそうな屈託の無い笑顔。

黒桐 幹也



中学も三年生になった時。

この二人に俺は出逢った。













――――――1994年 春。

長い、無駄とも思える始業式を終えて自分に当て振られた教室に向かう。

教室の中でみな思い思いの格好をしている。

着物姿が珍しいのか回りは私に視線を向け小声で何かを話している。

でも、そんなのはどうでもいい事。

小学校、中学一,二年と同じ事なので慣れている。

そんな教室の中に、二人の少年が目に付いた。

一人は――――――。

黒色の髪に黒ぶちの眼鏡をした少年。

何か目立つ格好や相貌をしている訳ではない。

ガクラン姿が目立つと言えば、そうかもしれないが。

そんな中、私は気付いてしまった。

他の誰も気付かないかもしれないが。

ソノ少年が纏っている雰囲気が・・・異常なのだ。

『死』を連想させるような危うくて冷たい雰囲気をもつ少年。

遠野 『志貴』

私と同じ名前の発音をする男。



――――――そして、もう一人。

先程の遠野 『志貴』に似ているけれど、何処か違う。

彼はいまだ少年の面影が残る、柔らかな顔立ちをしていた。

大きな瞳は温和で、濁りなく黒い。

その性格を表すように髪型は自然で、染めても固めてもいない。

かけた眼鏡は黒ぶちで、そんな所も遠野 『志貴』に似ている。

飾りのない服装は、上下ともに黒色。

黒桐 幹也。

どこかフランスの詩人めいた名字の男。

それが私と彼らの出会い。













――――――1994年 春。

麗らかな春の日差し。

草花や木々の芽も膨らむ暖かな季節。

始業式を無事に終え、僕は新しい教室へと足を運ぶ。

これからは、この教室で新しい人達と一年を共にする。

僕が教室へ入って一通り確認すると、二人の人が目に付いた。



一人目は――――――。

この学校では珍しいガクラン姿。

僕と同じで黒色の髪に、黒ぶちの眼鏡。

笑顔だが何処か無理をしているような、一歩みんなから引いている感じがする少年。



もう一人は――――――。

着物姿の少女。

質素な着流しに乱雑に切りそろえられた黒絹のような髪。

中世的な顔立ちをした綺麗と言うより凛々しいと言った相貌をした少女。



遠野 『志貴』と両義 『式』

共に同じ『シキ』と発音をする二人。

どこか同じ雰囲気を持っている二人。

僕はその二人に出逢った。







・・・












今――――――ゆっくりと確実に、運命の歯車は動き出す。

結末に向けて、歯車は廻る。

物語は紡ぎだされた・・・。

だが、その物語の結末は―――――誰にも分からない。







何事も無く平和だった町に突然起こる事件。

それらに関わる者達・・・。

闇夜を闊歩する殺人鬼。

堕とす幽霊。

死を具現する死神という名の殺人貴。

忘却した「 」の器。

全ては――――――。



独奏弧曲/了









後書き
最終話終了です。
やっと終わりました(笑)
次は殺人羨望(前)へと移行すると思います(オイ)
ちょびっとオリジナルを入れたいと考えました。
堕とす幽霊の事ですね〜♪
それではっ。

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